誘惑。


誘惑。

誘惑。

仕事も順調で、彼も優しくて、何もトラブルがない生活。

平凡こそ大切だとわかっている。

のに。

突然自分の心が騒ぎ出す。

ソレデイイノ?

そう、多分私は恋愛依存症。

たちの悪いことに、恋愛をしていればいいというわけではない。

いいな、と思ってから、その相手をオトすまでの駆け引きをしている間がたまらなく好きな自分を知っている。

もちろん、それからずっと愛し愛されのいわゆるベタベタした関係も好き。

今現在だって、その状態は継続中。

だけど、付き合ってしまったらあのドキドキを味わう事はできない。

相手の様子を見ながら、どうやったら効果的なのかを探る。

彼はボディータッチに弱い、とか、目を見つめられるのに弱い、とか。

セクシー系が好きなのか、それとも可愛い妹系が好きなのか。

相手に合わせて変幻自在な自分が時々恐ろしくなる。

そして、変幻自在がゆえに、それを付き合いだしてから相手に咎められることもある。

だって、どれも私なんだもん、それに納得してくれる人は少ない。

自分の中の一つのキャラクターだけを出しながら付き合うから、他の部分が出たいと暴れ出す。

そしてまた、恋愛がしたくなる・・・。

付き合っていると、相手がどんなものが好きなのか分かりきってしまう。

それが本当に退屈になる。

答えを知ってしまえば、推理小説も読む気がなくなってしまうように、いろいろなことを探りながら考えながらやるからこそ楽しいこともある。

でも、私は意外にお堅い家に育ったせいか、二股などができない。

だからこそ悩む。

もっと道徳心のないタイプだったら、こんなに自分と葛藤することもないのに、と。

今日も心の中がざわつく。

だって、私の事が気になっているそぶりをする彼がいるから。

ああどうしよう。

もっともっと気にしてほしいと思ってしまう。

別にすごく好きなわけでもないのに、相手を誘うようなそぶりをしてしまう。

見られている、と思うと本当に無意識に動きが変わる自分がいる。

初めて抱きしめられるときの、初めてキスする前の、あの息が止まるようなドキドキ感を味わいたいと思ってしまう自分がいる。

これに負けたら、私はまた罪もない、私に幸せを与えてくれている彼氏と別れることになるのに。

私の中のもう一人の私の誘惑に抗えなくなる・・・。

打算のカタマリ。

友達と数人で散々カラオケで盛り上がったあと、みんなで海にドライブした。

寒いけど、途中で缶コーヒー買えばいいよ。

寒くなってくると、星が本当にきれいになる。

夏とは違い、空気が研ぎ澄まされてくる

冬はいい、だって、そっと寄り添う口実ができるから。

お友達の状態から一歩先に関係を進めるにはこういうチャンスを逃してはいけないと思う。

もちろん、狙っている相手にさりげなく声をかける。

「座ろっか」

他の友達と騒ぎ出す前にまず最初のアクション。

これで素直に座ってくれるならかなり脈ありと見る。

そうではない場合は、今日はさっと諦める。

しつこいのは男も女も同じ、嫌われるもんね。

座ってくれたらチャンス。

適当な時を見計らって、空を見る。

「ね、星がすごいね~!」

相手も空を見上げて同じようにしてくれるならますますOK。

ぐるっと見回すふりをしながら、相手の肩にちょこんと頭を乗せる。

乗せるのはあくまでも後ろ頭。

彼と反対側の星を見ていて、ちょうど乗っちゃいました、というニュアンスがいいみたい。

これで相手の様子をうかがうのが私の中のスタイル。

相手が私の頭に同じようにそっと頭を乗せてきたりしたらまず間違いなく、落とせると確信しちゃう。

そうなってからの私は、さらに女優になる。

自然な動きに見えたとしても、私の中は打算だらけだ。

こうしたら相手がどきっとする、こうしたらかわいく見える。

全て計算して動く。

ただし、普段からすべての男性に対してアピールするような動きをやっているから、それに打算があると気付く人は実は少ない。

その代り、好きでもない相手に誤解をさせることは多々あるのが難点ではあるけれど・・・。

座り直した後に相手の顔を覗き込む。

優しい顔でこちらを見ていれば、にこっと笑ってそのまま肩に頭を乗せる。

そして「寒いね~」。

実はこの頭を乗せた状態は、体勢的には肩が凝ってしんどい(笑)

だって、本当にちょこんと乗せているだけで、頭の重さはほぼ首にちゃんとかかっているから。

そこまで努力して頭を乗せているのを気付く人ってどれくらいいるのだろうか、と思う。

頭を乗せている方の手が動いたら、それは勝利のサイン。

だってその手はたいていこちらの肩か腰に回ってくるから。

そう、無邪気に見えるけど、今日も打算だらけで私は動いている。